風雅堂異談
胸を叩く優。
その横で…
『安請け合いするなよ~知らないぞ。結構な術者だぞ。』
ゆきが優を睨む。


「じゃ頼んまっせ。あっ、コーヒーぐらいサービスするから。」


「いゃ、熱いほうじ茶にして下さい。」眉を引き締め、毅然として告げる優。
どこかやはり抜けている。


「まぁまぉ頼んだよ。自由に店でも自宅でも来てくれていいから。」
逃げる様に立ち去る川辺。


その日の午後、店を早じまいし、喫茶店に向かう優。ゆきは無理矢理留守番させられる。
喫茶店ランに入ると麗子が迎える。


「いらっしゃいませ。あっ!本屋さん!」


はにかみながら、優が答える。


「いらっしゃいました。」


そのやり取りを聞きつけた川辺が出てくる。


「やぁ~来てくれたか。まぁちょっと厨房を見てよ。」
2人で厨房に行くと、腐臭が漂う。


「うぇ~臭い!」
素っ頓狂な声を上げる優。その優の肩にゆきの意識体が乗っている。ゆきの目には、厨房のここかしこに、使い魔らしき小鬼が映っている。

『おー、いるいる。うじゃうじゃいるわい。』


ゆきの視線に気が付いたか、小鬼どもが一斉に優の肩口目掛け飛びかかる。
無論、川辺にも優にも見えていない
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