四日間の恋人契約

「志摩の発表までまだ一時間以上あるし、お前ら見たいとこ見てきていいぞ」

教授はすでに何を見るのか決めているようで、プログラム表には赤ペンでギッシリ聞きたい講演に丸が付いていた。じゃあな、と言って教授はさっさと人混みに消えていった。

「教授、さっさと行っちゃいましたね。どうしますか、果穂先生、真田先生。私は講演よりもまずは一階の大ブースで開催されてる試供品いっぱい貰えるところに行きたいんですけど」

「あ、私も行きたい」

すかさず反応すると、真田が呆れたように笑う。

「まあ、皮膚科の学会と言ったら女子のお目当てはそこだよなぁ」

皮膚科という科に薬を提供している大手企業は全世界に沢山あり、その企業ブースが集まっているだだっ広い会場が皮膚科学会には必ずある。

そこでは新しい軟膏だとか、医療メーカーが製造する化粧品だとか、はたまたくじ引きで商品が当たるブースもあったりとか、メーカーによって色々な工夫があってとにかく楽しいのである。

そこで商品を医者にアピールすることで、患者さんに処方してもらおうという利害関係があるのだが、勿論商品は使ってみなければ分からないので、私たちも沢山もらって試さねば!という大義名分のもと試供品集めに勤しむのである。

「真田はくる?」

「まあ、今からだとどの講演聞いても中途半端に抜けて志摩先生のところに行かざるを得ないし、確かに企業ブースでも見に行くのが時間的にはちょうどいいか」

そうして三人で会場に向かう。
海外というだけあって、やはりすれ違う人は様々な人種の人がいた。西洋人もいれば、黒人もいるし、中東系なのかターバンを巻いている人もいる。当たり前だが、医学に国境はないのである。

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