四日間の恋人契約
大会場に着くと、沢山のブースがあって、これは1時間じゃ回れないだろうな、と察する。
各々が付かず離れずの距離で色々な企業を回り、パンフレットだとか商品だとかを貰いながら練り歩く。
その度、英語で内容を説明されるが、やはり慣れない。英語の雰囲気だけ掴んで適当にオーケーオーケー返事をしてサッと離れる、を繰り返すのだから、私は本当に格好がつかない。
その点、と少し離れた位置にいる明里を見遣る。堂々と様々なブースを回って、何を言われても日本語で返している。すごい、しかもなんとなく通じている。
「あいつ、末恐ろしいよな……」
ふと気づくと真田が近くにいて、明里を呆れるように見ている。
「いや、あの物怖じしない性格は本当凄いと思うよ。教授と講師の志摩先生に挟まれてても恐縮するどころかむしろ従えてる雰囲気すらある」
「まあ、ああいう子が学会に来てくれたほうが、俺らとしても気を遣わなくていいから楽ってとこはあるよな」
「それは一理あるわ、明里ちゃんなら放っておいても勝手に楽しんでてくれそうだし」
そうして憎めない可愛い後輩がどっさりと戦利品を貰う様を遠目に見遣る。
「真田はなんか良さそうなの貰った?」
「お、それ聞く?いやー、見てくれよ、このステロイド軟膏!いつも俺らが使ってる軟膏の英語バージョンってあんまり見ないよな!コレクションしたくなるわ」
「でた、軟膏オタク」
「ステロイド軟膏のデザインって色合い可愛くて好きなんだよな。強さランクによってパッケージの色合い違うの可愛いよな〜って思って毎回使ってる」
そうしてうっとりと5g容量の小さい軟膏を大切そうに見つめる同期に、私は静かに少し引いた。