四日間の恋人契約
「そういうお前は?」
「私は大人しく美容ブースで新しいニキビ用化粧水のサンプル貰ってきたとこ。海外のだから日本人の肌には合わないかなとは思ったんだけど、興味本位で」
「お、さすがうちの大学の美容外来の担い手!」
「時間あればレーザーブースとか行きたいけど一回行ったら絶対長くなるから、いまは我慢してるとこ」
「はは、お前も負けず劣らず美容オタクだよな〜」
くしゃ、と笑う真田を見上げて、私も自然と笑う。
「ん?何笑ってんの」
「いやー、6年前は皮膚科に入局したはいいけど、自分が興味ある分野すら分からないし、皮膚病理は読めないし、なーんにも分からなかったのにさ。いまは一丁前に自分が好きな分野があって、そこに自然に足が向くようになったのって凄い成長なのかもなぁって思って」
そんなことをしみじみ言うと、真田も納得したように頬を緩める。
「確かになぁ。特にお前は皮膚科に興味があるってよりは、親が皮膚科で開業してるから入局した側だからな」
「そうそう、真田みたいに軟膏選び楽しい!アトピー大好き!とか全然無いし、病理は大嫌いだし、入局したのに詰んだって思ったもん」
「お前は救急大好きっ子だったもんな〜」
「そうそう、あの一分一秒争う過酷な環境が好きだったのに、親の手前皮膚科入ってさ。気付いたら皮膚科で外来ばっかりこなしてるんだから、わかんないもんだよね。いま救急行けって言われたら泣いて断る」
「そりゃそうだ、俺だってお前が救急行くとか言い出したら泣いて引き止める」
その言葉に真田を見上げる。パチっと視線が合って、その眼鏡越しの切れ長の瞳を見つめる。