四日間の恋人契約
奈津子は私たちの同級生で、男性関係にアグレッシブな女の子だった。同じ大学生はもちろんのこと、他学部に社会人に医者に、と学生時代から沢山の男の人を渡り歩き、それは時に同時並行されていた。
「あの時は私と真田、名簿も離れてたしほとんど話したことなかったけど、真田は奈津子のそういうの分かって付き合ってんだと思ってた」
「そうだなー。まあ、側(はた)から聞いてるのと実際付き合うのは違ったってことだな。その時は俺だけを見てくれてると思ってたんだよな」
まあ、悪い思い出ばっかじゃないから良い経験になったんだろうな、と私と言うよりは自分に言ってるように小さく真田は呟いた。
「そのあとは?」
「なんだよ吉野、ぐいぐい来るな。今はお前が彼女だから教えてやんない」
べ、と舌を出して意地悪く真田は顔をしかめた。
「えー、彼女なんだから教えてよ」
「嫌だよ。俺だって彼女の前の彼氏の話なんて聞きたくないし、俺も前の彼女のことを今の彼女に話したくない」
「そのわりに真田から私に元彼の話振ったくせに」
「そんな詳しく聞いてないだろ。俺は目の前の彼女がどれくらい彼氏いないのか知りたかっただけ」
「ふーん、目の前の彼女ねえ?」
誰だろう、と言わんばかりに、きょろきょろと私は周りを見回すフリをする。
「お前だよ、よーしーの」
ぺち、と額を優しく叩かれて、なんだかくすぐったくなる。
「ふは、悪くないね」
「何が」
「真田に彼女扱いされんの」
「……。お前はさあ」
「ん?」
「……なんでもない。ほら、見えてきたぞ」
夕焼けも空の端が淡く青くなってきた。少し薄暗くなった外の景色の中で、キラキラ輝くネオンの光が目の前いっぱいに広がっていた。