四日間の恋人契約
「え、じゃあ真田先生が恋人になれば良いじゃないですか!」
ぶはっ、と目の前で真田が盛大に咽せた。
「は!?なんで俺が」
ごほ、ごほ、と完全に気道に入ってるでしょ、という咳き込み方をしながら真田が焦ったように声を上げる。
「彼女いないでしょ!」
明里ちゃんがズビシと真田の肩にチョップする。すると教授も目をキラリと光らせて反応する。
「いいなそれ、教授命令。そうだな…とりあえずシンガポールいる間だけ試しにお前ら付き合ってみろ」
「はあ!?教授まで何言ってんですか酔ってアルコール頭にまで回ったんじゃないすか!?それか飲みすぎて肝硬変からの肝性脳症とかじゃないすか羽ばたき振戦やってみてくださいよほらほらほら!」
ガクガクと真田は教授の肩を揺さぶるも神妙な面持ちのままびくともしない教授。
「いや……たしかに、真田。そろそろお前も結婚したほうがいい」
「久しぶりに志摩先生が飯以外の事を喋ったと思ったら話が飛躍している!?」
「なんだ真田ぁ、私じゃ駄目ってことかぁ!?」
「吉野も乗るのかよ!?ツッコミが追いつかねーよ!」
はあはあ、と肩で息をしている真田。
なるほど、こいつがここまで焦るのも珍しい。
面白い玩具を見つけた子供のように、私は無邪気に懇願してみる。
「ねえ、たった四日間だよ!?駄目なの!?ケチ!」
そうして泣き真似まですると、それに合わせるように真田以外の三人が声を合わせる。
「「「けーち」」」
ちょっとくらいいいじゃん、ねーっ?と明里と二人で唇を尖らせる。
さあ、どういう風に彼はこの攻撃を躱すのだろう。
そうニマニマしながら待ってると、真田は一拍呼吸を置いて、はぁ〜と長い長いため息をついた。そうして半分以上残っていたシンガポールスリングをさっきの私のようにグビグビと飲み干して、プハッと息をつく。
そうして思いがけない台詞を叫んだのである。
「だぁああ!分かりましたよっ!!付き合えばいーんでしょ、付き合えば!」
「「「「………え?」」」」
この真面目クンは、真面目すぎて、たまに思いがけないことを言うことを私たちはすっかり忘れていたのだった。