愛と呪いは紙一重
この世界には二つの種族が存在する。一つは生者で、もう一つが死者。死者はもちろん肉体が存在せず、本来ならばこの世に留まるべき存在ではない。

だが、強い思いがあると死者はこの世に縛り付けられてしまう。そして生者の日常に溶け込むのだ。しかし、死者の存在を目に映すことができるのは、この世界に生きる一割程度である。

そして、死者の思いを聞いてくれる人間はもっと少ない。だから彼らは必死に訴えるのだ。

自分で自分にかけた呪いを解いてほしいと……。



学校、病院、テーマパークなど多くの人が集まる場所は、様々な感情が行き交う。もちろん喜びや幸福もある。だが、悲しみや怒りを覚えてそこで命を断つ者もいる。そういう場所には死者が集まりやすい。

交番勤務の頃に毎日着ていた青い制服ではなく、黒く重いスーツを着て灰原恵(はいばらめぐみ)はため息をつきたくなるのを堪えながら廊下を歩く。

恵はこの春、めでたく刑事になることができた。そのため、これから自分の居場所となる警視庁に行き、部署へと歩いているのだ。
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