愛と呪いは紙一重
硝子に案内されたのは、普段他の監察医たちとデスクワークをするための部屋だった。ただ、法医学教室らしくパソコンやホワイトボードだけでなく人体模型などが置かれている。

「コーヒー、ブラックでいける?」

「はい。あっ、お構いなく」

硝子は二人分のコーヒーを作り、出来上がったものをカップに注いで恵の前に出す。そして椅子に座って開口一番、驚くことを告げた。

「田中さんだっけ?この人、自殺じゃないよ。殺されてる。そう本人が言ってる」

「えっ!?」

恵は驚き、今まで振り返ることのなかった背後に目を向ける。血だらけでこの世にいてはならないものとなってしまった愛は、変わらずブツブツと光のない目で呟いている。だが、何を言っているのかさっぱりわからない。

「……今も電車に轢かれた時のこと、話しているんですか?」

冷や汗を流しながら硝子の方を恵が見ると、カップに口をつけていた硝子はニコリと笑う。

「ああ。犯人の名前も言っているよ」

「この霊の言うことが本当なら、犯人は誰なんですか!?」
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