愛と呪いは紙一重
仕事が休みだった今日、愛は隣街に新しくできたカフェに行こうと思い、駅のホームで電車が来るのを待っていた。しばらく待ち、電車が近付いてきたその瞬間、愛の背中が強く誰かに押された。

愛が首を後ろに向けると、帽子を深く被った拓人が勝ち誇ったような顔をしている。そして、愛の体は一瞬にしてバラバラになってしまった。

「ッ！……ハアッ……ハアッ……」

生々しい本人の生きていた時の記憶に、恵は荒い呼吸を繰り返す。冷や汗と震えが止まらず、吐き気が込み上げてきた。

「幽霊の記憶を見るなんて初めてだろ。これでも飲め」

硝子が白湯をマグカップに注ぎ、恵の前に置く。それを勢いよく飲み干すと、体の芯が少しずつ温かくなっていくのがわかった。

「硝子さん、どうして幽霊の記憶を見ることができたんですか？」

「それは私にそういう力があるからだよ」

硝子はそう言った後、恵の後ろでブツブツと話す愛に目を向ける。もう硝子に手を包まれてはいない。しかし、恵の頭には何故か愛の声が響いた。
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