愛と呪いは紙一重
「黒鳥先生、見張っていたとしても奴が来るとは限りませんよ?このままホテルに泊まる可能性だってありますし……」

「いや、彼女と同棲しているなら一晩泊まることはないだろう。あのクズ男にとって長く付き合っている彼女は何としてでも結婚したいATM。彼女に怪しまれない程度に火遊びするつもりだ」

二股男の心理をペラペラと話す硝子にこれ以上踏み込んではいけないと恵は感じ、口を閉じる。それから三十分ほど経った頃、エレベーターのドアが開き、スーツを着た拓人が出てきた。その顔はニヤつき、浮き足立っている。

『小室拓人ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』

拓人の姿を目にした瞬間、先程まで大人しかった愛の全身が黒い棘のようなもので覆われ、目は赤く血走っていく。そして猛スピードで拓人の元へ走っていった。

「さて、あとは彼女に任せて帰るとするか」

あくびをしながら硝子が言い、恵は「は?」と驚いて慌てて硝子の華奢な腕を掴む。
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