愛と呪いは紙一重
そして本などを読み、自分が見えているのは幽霊で他の人間には見えていないのだと納得する。だが、納得ができると今度は幽霊に対して恐怖心を抱くようになってしまった。

(警察官になったら、こんな幽霊を毎日のように見なくちゃいけないの?)

そのことに絶望し、恵は警察官ではなく別の職に就きたいと親に話したこともあった。しかし、「灰原家に生まれたからには警察官になれ。そうでなければ、うちの敷居は跨がせん」と言われ、警察官になるしかなかった。

まだ交番勤務だった頃は我慢することができた。市民の生活に一番近いところにいて、殺人事件などとは縁がない。幽霊の姿を目にしなくていいため、まだ頑張れた。しかし……。

(こんな幽霊だらけのところ、俺はやってけるのか?まだ初日なのに気が狂いそうなんだが……)

殺人という負の感情が溢れる現場に出る刑事たちの背後には、その時の被害者であろう人たちが憑いている。恵は自身にもあんな霊が引っ付いてくるのでは、という恐怖でいっぱいだった。
< 4 / 20 >

この作品をシェア

pagetop