愛と呪いは紙一重
幽霊は自分の姿が見えるとわかった人間に執着するようになる。そのため、恵は幽霊が見えないフリをして、幽霊と目が合わないように、合ってしまっても驚かないよう心がける。

(ポーカーフェイス、得意でよかった……)

恵は与えられたデスクに腰掛けながら、フウッとようやく息を吐いた。



恵が捜査一課に配属されて、ちょうど一週間が経った頃だ。突然、静かだった部屋に無線が流れてくる。

『××駅のホームから女性が飛び降りた。捜査員は直ちに現場に急行せよ』

今までこのような事件の無線が流れることはなく、平和な日々だった。恵は、一気に奈落の底に突き落とされたような感覚を覚える。よりによって初めての事件が電車の事故対応など、ついてなさすぎる。

「お前、とんだ貧乏くじだな」

「これなら普通の殺人事件の方がマシだぜ。何たって、体がバラバラのグチャグチャの遺体を見なきゃいけないんだからな」

先輩たちにそんなことを言われながら、恵たち捜査員は現場へと向かう。事件性があるかどうかを判断しなくてはならないのだ。
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