愛と呪いは紙一重
そう話す捜査員の手には彼女が持っていたかばんがあり、その中には遺書が書かれていたそうだ。遺書の中には、仕事に疲れたとだけ書いてあったという。

(免許証を確認したら、俺より若かった。まだ人生はこれからだったはずなのに……)

恵がそんなことを考えていると、どこからか視線を感じる。舐め回すような嫌な雰囲気を纏った視線だ。思わず恵は辺りを見回す。

「灰原、体調が大丈夫そうだったら体を探すのを手伝ってくれ。まだ左足が見つかったないんだ!」

「はい、今行きます!」

恵は返事をし、左足の捜索に取りかかる。その間もずっと嫌な視線はあった。



辺りが薄暗くなり始めた頃、ようやく左足が見つかった。しかし、仕事はそれだけで終わらない。

解剖を行うため、法医学教室に遺体を運ぶことになり、それを恵は任されてしまった。非常に憂鬱である。

「最悪だ。遺体を運ぶなんて……」

車内には恵一人しかいない。夜になりつつある街を、遺体を乗せて走っていく。現場から法医学教室までは三十分とかなり距離がある。
< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop