愛と呪いは紙一重
嫌な視線、ドクドクとなる心臓、それらから意識を遠ざけるように恵はひとりごとを呟く。だが、霊感は正確にこの場に霊がいるということを告げていた。

運転をしている恵の体に、突然血だらけの腕が絡み付く。突然のことに恵は驚き、ハンドル操作を誤るところだった。

後ろを振り返るのが怖く、バックミラーでそっと確認をすると、潰れた顔の女性が何かをブツブツと言っている。恵の顔は一瞬で真っ青になり、悲鳴を上げるのを何とか堪えた。

法医学教室に着くまでの間、恵はずっと女性に抱き付かれた状態のままだった。気が狂ってしまいそうなほどの恐怖の中、何とか法医学教室の駐車場に着く。そこでは、白衣を着た女性の監察医が待ってくれていた。

高身長でモデルのような体型をしており、赤いグロスが引かれた唇の近くにあるホクロがセクシーだ。顔立ちも彫刻のように美しく、何故監察医をしているのか知りたくなるほどだ。

女性に見惚れてしまったためか、一瞬背後にいる霊の存在を忘れてしまう。しかし、女性が車から降りてきた恵に向かって言った。
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