【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 聞きたいことは沢山あるのに、もう父はいない。

「……ん?」

 エンディングノートの入っていた棚にまだ書類のようなものが入っているのを見つけて、取り出してみる。『九条誠について』と表紙がついていて、思わず捲ってしまう。

「……出身地に家族構成……会社のことまで……まるで調査書みたい」
 かなり簡易的であるものの、彼自身と家族のプロフィール、それから彼の勤める会社の概要が記載されている。

 彼が初対面から私のことを知っているような口調だったのも、私についての調査書を彼が持っているとすれば納得がいく。
 書類によれば、彼は『九条リゾートホテルグループ』の中心となっている国内ホテルを任される副社長で、お父様は会長、弟さんは海外のホテルを任されているらしい。

「九条リゾート……ってあの!?」

 思い出した。九条リゾートホテルグループ。
 通称九条リゾート。その歴史は古く、かつては華族、そして今は主に芸能人や富裕層の人たちがターゲットの歴史を継承しつつ、独創的でラグジュアリーがコンセプトのリゾートホテル。
 軽井沢や熱海など別荘地から始まり、沖縄から北海道まで国内を中心に展開していて、海外もハワイやバリ、香港などにリゾートホテルを構える。

 ほぼ全て部屋がスイート仕様なのはもちろん、屋内プールに水族館……とにかく、贅をつくしたつくりになっていて、つい先日もテレビで特集されているのを見たばかりだ。
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