【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 腕から解放されて、互いにベッドの上で手を重ねて向き合った。真っ直ぐに互いを見つめたまま、私が頷くと彼はゆっくりと話してくれた。

 誠さんと父の出会いは以前伺った通り、持病の発作を起こした父を誠さんが介抱してくれたところから。父はそこで誠さんが、いつかコラボを夢みていた九条リゾートグループの副社長だと知り、自分に万が一があった場合、どうか宇野堂の和菓子をホテルで提供してもらえないかとアピールをしていたのだという。父との話の中で宇野堂の技術や思いは職人の健二くんが継いでくれているということを理解した誠さんは、自ら条件として「長女の宇野ゆきのとの結婚」を提示したらしい。

「この期に及んでそんな……」

「冗談じゃないよ。本当だ。俺は最初からゆきのが欲しかった」

「だって私たちあの日が初対面でしたよね……? 宇野堂に誠さんがきてプロポーズ……してくれたとき……」

 誠さんはふっと目を細める。優しいけど、少し寂しそうにもみえた。

「いや、俺たちはそれよりずっと前に会ってるんだよ……そうだな、ゆきのは結婚前に小さなゼリー会社で事務をしていただろう?」

「どうしてそれを……?」
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