【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 本来私には縁がないホテル。縁のないひとたち。
 そんな九条リゾートの副社長……御曹司が私の婚約者だなんて。

 信じられない。例え、本当に彼が何らかのかたちで父の命を救って、そのお礼として私を差し出したとして、私との結婚が彼のメリットになるとは思えない。
 なにか、他に裏があるんじゃないだろうか。私と結婚することによって彼が得られるメリット。結婚をメリットデメリットで考えるなんてしたくないけれど、せずにはいられない。

 とはいっても、今の私にはなにも思い当たらない。考えれば考えるほどネガティブになってしまうので考えるのをやめた。一人で堂々巡りしていても仕方がない。
 とにかく、彼は私の婚約者。宇野堂も、妹のきららのことも護ってくれるひと。
 私にできる最善をつくそう。

「九条、誠さん……」

 私はもう一度、自分に言い聞かせるように彼の名前を繰り返した。

 ◇
「お姉ちゃんあの九条誠と結婚するって本当?」

「お前アイツ……九条誠と結婚するって本気かよ」

 まるで現実味がなくて、もはや他人事のような気分になっている私のもとに妹のきららと、和菓子職人の健二(けんじ)くんが押し寄せてきた。
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