【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「……他に質問は? ゆきのが望むならなんでも答えるよ」

 額を軽く擦り合わせて、互いの息が絡み合う距離で問われる。誠さんの黒曜石のような双眸が私を映す。
 体の奥から湧き上がる熱に項あたりがチリチリする。
 ずっと、胸につっかえていた不安が顔を出す。
 誠さんは私と誰かと重ねているんですか? プロポーズの日が初対面でなかったと知った今も、確信が持てない。こんなに疑って、彼を傷つけるかもしれない。

「どうしたの?」

 あの日見てぞくりとした目とはまるで別物の、この優しい視線を失うかもしない。
 でも……聞かなかったらもっと後悔する。直接誠さんの言葉で聞きたい。

「……誠さんは、私が欲しかったと仰ってくださいましたよね」

「ああ」と誠さんは頷いて、私が続けるのを待ってくれる。

「……私の他に、誠さんの想っている方がいたり……私をその人に重ねている……とか」

 あのロングヘアーの彼女は、誰ですか? その一言が喉に引っかかってなかなか出てこない。誠さんの顔が見れない。声が震えないようにするのが精一杯。どうか否定して欲しい、そう願ったとき。

 ガシャンッ! なにかが落ちた音がした。反射的に起き上がった誠さんがその音に駆け寄る。バスルームからだ。

「……え」
< 111 / 145 >

この作品をシェア

pagetop