【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 誠さんの後についていってみたのは、バスルームでこちらに背を向けて立っている、美少女だった。腰まである長いストレートヘア。裸体にタオルを巻いて立ち竦んでいる。

 血の気がさあっと引いていくのがわかった。
 忘れもしない。パーティーの日、駐車場で誠さんと親しげに話していることろを見かけた「彼女」だ。

 どうしてこの人が誠さんの部屋のバスルームに?
 お仕事だと思っていたのに、本当はこの人と会っていたの?
 電話に出てから40分後って言ったのは、もしかしてこの人と?
 もの凄い勢いで自分で自分を追い詰めていく。ついさっきまで、否定して欲しいと願っていたことの辻褄がパズルみたいに当てはまっていく。

「ゆきの! これは違……」

「……なんで、ですか……なら、最初から……そう……」

 私の肩を掴んで、なにか言おうとした誠さんを遮る。言い訳なんて聞きたくない。
 怒鳴って、殴ってしまいたかった。最低! あり得ない! そう罵りたかったのに、絞り出せたのは蚊の鳴くような声と、止めどなく溢れてしまう涙だけ。

 最初から私が欲しかったなんて嘘、ついてほしくなかった。
 脚の感覚がなくなって、ふらついた私を抱き留める。離して欲しくて抵抗するけれど、力強く止められていて振りほどけない。

 そんなとき、左手の薬指で主張する輝きを抜き取って誠さんの胸に押しつける。
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