【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「離して! この指輪も……婚姻届も返しますから!」
「ゆきの! 聞いてくれ」
誠さんの腕の中で暴れてなんとか振りほどこうとすればするほど、誠さんの腕の力は強まって一向に動けない。今すぐにでもバッグの中から婚姻届を取り出して突き返したかった。私じゃなくてその「彼女」の名前をかけばいい。はじめからそうしてくれていれば、せめてお飾りなのだと告げてくれていれば、こんなにも胸が張り裂けそうな思いをすることもなかったのに。
「頼む。聞いてくれ」
押しつけていた指輪を受け取った彼が、悲願するような声でいった。腕の力を緩められ、咄嗟に動けなくなってしまう。誠さんが彼女の方を向く。愛しい人に向けるとは思えないほど冷たく、静かな怒りすら感じる瞳。
「優、こっちを向け」
あまりの低い声にビクッと肩を揺らしたのは私だけじゃなかった。バスタオルを巻いた、優と呼ばれた美少女も。……え。優?
「あー……兄さん、これには訳が……」
美少女はとても気まずそうに、恐る恐る振り返る。その顔は、ついさっきまで一緒にた、誠さんの弟の優くんだった。
「へえ……説明してもらおうか。俺が納得できるようにな」
うっすらと笑った誠さんの表情に、叱られた子犬のような表情で優くんは経緯を話した。
「ゆきの! 聞いてくれ」
誠さんの腕の中で暴れてなんとか振りほどこうとすればするほど、誠さんの腕の力は強まって一向に動けない。今すぐにでもバッグの中から婚姻届を取り出して突き返したかった。私じゃなくてその「彼女」の名前をかけばいい。はじめからそうしてくれていれば、せめてお飾りなのだと告げてくれていれば、こんなにも胸が張り裂けそうな思いをすることもなかったのに。
「頼む。聞いてくれ」
押しつけていた指輪を受け取った彼が、悲願するような声でいった。腕の力を緩められ、咄嗟に動けなくなってしまう。誠さんが彼女の方を向く。愛しい人に向けるとは思えないほど冷たく、静かな怒りすら感じる瞳。
「優、こっちを向け」
あまりの低い声にビクッと肩を揺らしたのは私だけじゃなかった。バスタオルを巻いた、優と呼ばれた美少女も。……え。優?
「あー……兄さん、これには訳が……」
美少女はとても気まずそうに、恐る恐る振り返る。その顔は、ついさっきまで一緒にた、誠さんの弟の優くんだった。
「へえ……説明してもらおうか。俺が納得できるようにな」
うっすらと笑った誠さんの表情に、叱られた子犬のような表情で優くんは経緯を話した。