【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「いたたっ、いや、九条さんは落ち着きがあって健二くんはないなって話……」

「そこは嘘でもそうだよって頷くところだろ!?」

 健二くんはツンツンとした短髪を掻いて大仰に呆れてみせる。
 なんだろう、健二くんに対して言い表せない違和感を感じた。私やきららをいつも揶揄ってきて、コロコロと変わる表情が年上とは思えないような人だけれど、その分純粋な人だと思っている。嘘をつくのが下手で、引きつった顔で大袈裟に笑うところとか。今、まさにそうだ。

 ――なにか言いたいことがあるのかな。

 そんな疑問は、きららの楽しげな声に吹き飛ばされる。
 そうだ、とにかく今は九条さんのことに集中しないと。

「まあ、私のタイプは弟さんの優さんなんだけど。あーもう、いつ見ても格好いいなあ」

 きららに言われて、その写真がツーショットであったことに気付く。
 彼にばかり気をとられていたけれど、九条誠さんの隣の弟さんはまた違った美形で、華やかさのある雰囲気だ。例えるなら白馬に乗った王子様だ。
 彼を一目みたときもそうだった。ついファンタジック例えをしてしまう。それほど兄弟揃って、現実離れした綺麗な顔立ちをしている。

「イケメンで御曹司って凄いね……まるでおとぎ話みたい」

「その条件で、お前が幸せになれるのかよ。この結婚」

 浮かれる妹につられて、またへらへら笑っていた私を、健二くんの鋭い声が刺す。
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