【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 すりむいた膝を隠して、彼は私を冷たい目でにらむとそういって一人立ち上がろうとする。けれど足が痛むようで眉間に皺をよせた。見た目によらず口の悪い少年は、無理やり立ち上がって、すぐそばの建物の壁に寄りかかってまた座り込む。
 私は彼の後ろをついていった。

「その足のケガ……応急処置ですけど」

 そういって私は彼の冷たい視線に笑いかけて、彼の血がにじむ膝にもっていた絆創膏をはる。
 戸惑う彼に「あとでちゃんと消毒してくださいね」と念を押す。

「……頼んでない」

 彼があからさまに迷惑そうな表情をしていたけれど、気付かないふりをして「迷子ですか?」と尋ねた。

「迷子はアンタだろ。視界の隅でうろちょろと……旅行?」

「うん。お母さんとツアーで来たんだけどはぐれちゃったんです。……アナタは?」

「……俺も同じだよ」

 彼はいつのまにか私の顔を覗き込むようにして見上げていた。日差しが眩しいのか目を細める。

「誰かに手を差し伸べられたのなんてはじめてだったよ」

「だって転んでたから……」

 例えあの場にいたのが彼でなくても手を差し伸べていたと思う。けがをして立つのがつらそうだったからそれともう一つ理由があった。

「それに、とっても寂しい目をしていたから」

「……そんな目でみるなよ」

 彼は目をそらすように伏せる。私はじっと見すぎてしまったのだと急に恥ずかしくなって顔が熱くなった。
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