【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
『やっとでたな! 絶対わざと無視してただろっ!』

「……相変わらずうるさいな、健二」

 隣にいる私にも聞こえてくるその声の主に私は思わず笑ってしまった。

『お前は相変わらず言葉足らずだな。……会えたのかよ。姫さんには』

「ああ。おかげさまで。明日朝一で妻と日本に帰る。続きはそのときにな」

『そーかよ……。あー……自覚したの遅かったわオレも』

「……今のは聞かなかったことにしてやる。二度と言うなよ」

『寛大なことで。取り敢えず安心したわ。じゃーな』

 プッと誠さんの耳元で通話の切れる音がする。健二くんから切ったらしい。

「心配してくれたんですね。何度も電話かけてくるくらい」

 相変わらず兄気質で心配性で思わずくすりとしてしまう。心配性なのは類は友を呼ぶというやつなのかもしれない。

「全く……これからは仕事でも顔を合わす機会が増えるからな。そのたび突かれそうだ」

 誠さんも溜息をついているけれどまんざらでもなさそうで、やっぱり仲がいいんだなと思う。

「仕事……といえば、その話もあまりしてこなかったね」

 誠さんが申し訳なさそうに私に視線を向ける。この旅行中何度も口にした「互いのことをもっと話す」ということだろう。確かに今まで誠さんの仕事についての話題はあまりなかった。私が理解しきれていないというのも大きいと思う。

 私が「聞かせてくれますか?」と尋ねると、彼は頷いてくれた。
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