【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「以前、5年後にオープンを予定している新ホテルの計画があるという話をしたのを覚えてる?」

 私は頷いた。取引先とのパーティーで、会長との話題に一瞬出て、帰りの車内でも気になって尋ねたことだ。

「確か……優くんと意見が合わない、と」

「そうなんだ。その理由というのが、俺は今回のホテルを従来通りのラグジュアリーではなく、もっと落ち着いたホテルにしたいと計画したんだ。おもてなしに力を入れた隠れ家をコンセプトにして、ひとりでも友達とでも恋人とでも家族でも……様々な人が自分なりの贅沢を楽しめるホテルにしたい、と。健二の採用もそのホテルで和菓子の提供を見越してのことだった」

 なるほど、それもあって健二くんは新作をたくさん作っていたのかと納得する。

 そしてなにより誠さんの語る新しいホテルを素敵だと思った。現状の九条リゾートは誰もが憧れるホテルだけれど、そのラグジュアリーさから利用する顧客は限定されている。そんな九条リゾートから、お客様ひとりひとりの贅沢に寄り添って、誰もが幸せな時間を過ごせるホテルができたらなんて素敵なんだろう。私もなんらかのかたちでそのお手伝いができないだろうか、と想像しただけでわくわくする。

 私が目を輝かせると、誠さんは眉を下げた。
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