【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「だが、これは九条リゾートにとってリスクでもあるんだ。だから社内の保守派からは批判の声があがっていてね。俺としては優の率いる海外事業部にも協力を願いたいわけだが……上辺だけのものでは上手くいかないからな」

 停滞しているとはいえ、もう既に計画は進んでいて社内もそれに合わせて動いているという。けれど九条リゾートの一つとして成功するには全社員からの全力の協力が不可欠で、海外事業部を率いる副社長の優くんからの注力もほしい。意見が分かれたままなんてもってのほかだ。

 語る彼の言葉に違和感があった。彼は珍しく弱きなのだと気付く。彼の判断には九条リゾートの全社員の生活がかかっている。私には想像もできない重圧。彼の中で過っている迷いを打ち消すために私ができること。私はベッドの上に座り直して、真っ直ぐ彼を見つめた。

「誠さん、いつか、で構いません。私を新ホテルのスタッフとして雇っていただけませんでしょうか」

 私の突飛な発言に、誠さんの目が丸くなる。私は有無も言わさずにこりと微笑む。

「私も誠さんの妻として新ホテルに携わりたいんです」
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