【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「なんで思いつかなかったんだろ! 健二、アンタお姉ちゃんの買い物に付き合ってあげなよ!」

 きららの提案に一瞬「え?」と思ってしまったけれど、確かに盲点だったかもしれない。
 健二くんは身近な兄弟のような男性で、なにより九条誠さんのことも私よりは知っていそうな感じだった。

「は? なんだよ急に。そういえばゆきのなんでそんな格好してるんだ?」

 きららの提案に驚く健二くんが、私の格好に気付いて更に目を丸くする。

「これは……」

 私は健二くんにも事情を説明して、最後に「お願い!」と頭を下げる。
 健二くんは頭を掻きながら「分かったよ」と承諾してくれた。

 宇野堂は浅草から徒歩20分ほどの位置にある。そのため浅草方面に歩いてデパートにやってきた。普段は地下の食品売り場で目移りしたり、プレゼントや自分へのご褒美にと化粧品売り場に行ったりする程度でしか利用しない。
 そのため、それまでは縁のなかった、所謂『ちょっとしたパーティー用のドレス』を試着しているだけで変な汗がでてくる。

「へえ、それいいじゃん」

 試着室のカーテンをあけた私をみて、健二くんはうんうんと頷く。
 健二くんが男性目線で選んでくれて、そのうえ店員さんにおすすめされたドレスは、デコルテが大きめに開いたネイビーのテールスカートドレス。丈は膝上5センチくらいだ。
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