【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 彼は当たり前のようにその指を舐め取り、私はどう反応したらいいのか分からず頭に浮かんだことを質問する。

「誠さんと健二くんはご友人なんですか?」

 ここで健二くんの話題をだすのも気が引けたけれど、先ほど誠さんが健二くんに「俺の友人とはいえ」と言っていたのが気になっていた。

「ああ。彼とは中学校が途中まで同じでね。そこで知り合ったんだ……まあ、腐れ縁というやつだよ」

 なるほど。誠さんとの婚約を知った健二くんが誠さんを「アイツ」と言っていたのも、以前彼と食事をした際に健二くんにドレスを買うのを手伝って貰ったと言ったら反応していたのも、二人が古くからの友人だったのなら納得がいく。

「そうだったんですね。宇野堂から健二くんの引き抜きがあったと伯母さんに聞いて驚きましたが……彼は素人の私からみても素晴らしい職人だと思います」

 先程は驚いてしまったけど、彼は私の兄のような存在であるという贔屓目を差し引いても逸材ともいえる職人だと思う。父がそんな才能と情熱のある健二くんに宇野堂を継いで貰いたいと言っていたことを思い出す。

「……アイツはもう我が社のパティシエだ。ゆきのにそう言って貰えて俺も嬉しいよ。……だが、やっぱり、少し妬けるな」

「わ、私ったらまた……!」
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