【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 またやってしまったと慌てる私を今度はからかうようにそう言った彼が、車をとめて窓の外を見やる。そこはテレビで何度も目にした九条リゾートだった。
 てっきりドレスを扱っているお店やデパートにいくのだと思っていたから固まってしまう。

「えっと……パーティードレスを選びにいくんです、よね?」

「ああ。そうだよ。いこうか」

私は彼に促されるまま、頭上にはてなを浮かべて憧れのホテルに初めて足を踏み入れた。


「まあ! 奥様よくお似合いです。宜しければこちらもお試しになりませんか?」

「あ……えっと、もう十分です。先程のダスティピンクのレースドレスとこのサックスブルーのドレスでもう……」

 新しいドレスを片手に迫る女性に体の前に手をやってやんわり断る。
 彼は私から一度も目を逸らすことなく、ソファーに座って私を眺めている。
 あれから何着パーティードレスを試着しただろう。
 ホテルに着いたかと思えば部屋に通され、現れたのは彼のスーツをよくオーダーしているというスタイリストと販売スタッフだった。

 誠さん含め、九条リゾートの上層部の方々はお得意様のため、お店に出向くよりもこうしてホテルなどでじっくり検討しようという話になったらしい。
 新作のドレスの数々や、セミオーダーもあると生地を当てられたり見本を見せて貰ったり。
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