【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 少し困った顔の彼は「少し露骨だったかな」と照れたようにいった。私は彼の言葉の意味を理解するのが遅れて、紙に水が染みこむようにじわじわと広がる羞恥心に耳まで熱くなる。

「えっと……あ……」

「今日は俺が見られる側だったんだね……今まで一方的だったから嬉しいな」

 どうしてこの人はこんなに恥ずかしくて甘い言葉をスラスラ囁くのだろう。
 普段彼に見つめられているのが自惚れではなかったと知って、更に頭がついていかなくなる。このままじゃ甘さに絆されて、余計に誠さんのことばかり考えるようになってしまう。

「そ、そういえばさっき会長さんとの会話にあった例の新ホテルのお話、聞いてもいいですか?」

 私は無理矢理話をかえた。会長さんと誠さんが話している内容で、唯一誠さんが話の続きを拒むように感じたから、記憶に残っていた。それに九条リゾートについて少し勉強してみたけれど、新しいホテルの話題はどの雑誌にも載っていなかった。

「ああ、あれは新しい国内小規模ホテルを約4年後にオープンさせる計画があるんだ。だけど俺と弟の優の間で方針について少々揉めていてね……話がストップしてしまっているんだ」

 彼はそこまでいうと「詳しくはまた今度話そう。それより」と話を変える。

「ゆきのがうちに引っ越してくる準備が整ったんだ。ゆきのさえよければ今日このままうちに来てくれないか?」

「えっ、今からですか?」
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