【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「こういってはなんだけど……先代のお父さんが亡くなって1ヶ月……お店も今日で閉店だし、ゆきのちゃんだけじゃ大変でしょう?」

「それは……」

 宇野堂の3代目だった父は持病で先月亡くなった。男手ひとつで私と妹を育ててくれた父。
 私は既に小さなゼリー製造会社で事務員として就職していて、宇野堂は土日に店番を手伝う程度になっていた。私の勤め先は、従業員20名ほどの小さな会社で、正直お給料はいいほうではない。

そのため宇野堂を存続していけるような貯金はなく、妹はまだ高校生で、経営が成り立つはずもないと判断した和菓子職人やアルバイトは早々に見切りをつけて去って行った。

 親戚を頼ったものの、みんな口を揃えて「大人しく閉店したほうがいい」の一点張りだった。どうすることもできず、今日宇野堂は60年の歴史に幕を下ろした。
 伯母さんの言うとおり、私には父の宇野堂を護ることができなかった。それどころか生活すら危うくて、今も少しでも足しになればと昼間の正社員の仕事に加えて、時給のいいコールセンターで夜勤をしている。
 
 父の残してくれたお金はあるけれど、これは妹のきららの進学資金に充てたい。
 もう、人に助けて貰ってばかりではいられない。そう痛感する。

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