【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
「驚かせて申し訳ありません。私、家政婦の藤でございます」

 私の反応に女性が皺の深い手を私の手に添えて、子供を落ち着かせるような声で言った。
 誠さんの祖母、そう言われたら納得してしまいそうな彼女が、家政婦さん。品があって、少し厳格そうな、凜とした雰囲気がある。この方が昨日私のドレスを着替えさせてくれたのだと思い出す。

「あのっ、昨日は着替えさせてくださりありがとうございました」

 私が頭を下げると家政婦の藤さんはにっこりと微笑む。気のせいだろうか、どことなく纏う雰囲気が誠さんに似ている気がする。

「頭をあげてくださいませ。もうこのお部屋以外はご覧になりましたか?」

「いえ、これから行こうと思っていたことろなんです」

「そうでしたか、もし宜しければご案内致します」

「是非お願いします……!」

 藤さんからの提案に食い気味でお願いする。誠さんは今日から私と誠さんの家だと言ってくれたけれど、昨日も眠っているうちに寝室にきてしまったし、お手洗いさえどこにあるかわからない。それに寝室でこの広さなのだから、家全体が私の想像する一般家庭とはほど遠い広さなのだろう。

「かしこまりました。それではご案内いたしますので、どうぞこちらへ……その前にお召し替えに致しましょうか」

「あ……っ」
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