【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 うっかりしていた。いくら着心地がいいとはいえ、いつまでもネグリジェのままでいるわけにもいかない。私は藤さんに案内されるまま自分の洋服がしまわれている部屋で着替えを済ませた。


 ついでに引っ越しの荷ほどきや、掃除の手伝いもできればと選んだ動きやすいパンツ姿で案内された部屋はどこも磨き上げられていて埃一つない。

 駐車場と納戸を兼ね備えた地下つきの、3階建て。間取りは5LDK。
全体的にモダンな雰囲気で洗練されている。

 私が眠っていた寝室は3階に位置していて、他にも2部屋あったけれど、客室のようだった。つまり、夫婦の寝室として用意されているのは一部屋だけで、誠さんと同じベッドで眠ることを前提とされている。

 ――昨日、一瞬誠さんが驚いた表情をしているからもしかして他に寝室があるのかと思ったけれどそういうわけではなかったんだ。

 最初から一緒に眠るつもりでいてくれたんだと安心する。
 出張から戻った誠さんと気まずいまま、互いにベッドの端に身を寄せて眠るのもどうかと思うけど。それまでに打開策を考えておかないと。
 今朝、手を振り払われたことを思い出して、胸がズキッと痛む。

「わあ、素敵なリビングですね」

 若干気後れしつつ、案内されたリビングに思わず声が漏れた。
 2階のリビングは吹き抜けになっていて、自然光がたっぷりと降り注いでいる。
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