【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 柔らかな光に緊張が解れていくのを感じた。

「ええ。誠坊ちゃん……旦那様もここを大変気に入ってられて。他の方のようにマンションに移られない理由のひとつだそうです」

 誠さんも……。1階の広々とした書斎は誠さんが仕事に集中するときに使用してるらしく、勝手にそこが誠さんのお気に入りなのだと思っていた。だから、偶然にも同じリビングを好きだと感じていたなんて少し嬉しい。

 広々としたリビングとダイニングを抜けて辿り着いたアイランドキッチンはライトの灯りが反射するほど磨き上げられているのに、使い込まれているのがわかる。
 ここで作られたものを誠さんが食べているのかな。普段どんなものを食べているんだろう。

「誠さんの好きなものとかあるんですか?」

 私が知っている彼の食事姿は、プロポーズのときに連れて行ってもらったホテルのレストランでディナーをしているところだけだ。父子家庭なこともあり、料理を含めた家事は一通り出来るつもりでいたが、それは自分の知る一般家庭での話。
 スーパーで安売りになったお肉や野菜をみて献立を決めたり、冷蔵庫の残りもので作る所謂家庭料理。誠さんが普段それを食べているようには思えないし、レストランのコースに出てくるような料理はとても作れない。

「そうですねえ、基本的になんでも召し上がる方ですが……強いて言うなら甘い物とカレーでしょうか」
< 72 / 145 >

この作品をシェア

pagetop