【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は１５年越しの愛を注ぐ

　まるで、誠さんはこの家で生まれ育ったわけではないかのような……。

　私の反応に藤さんはしまった、という顔をする。そして小さく「まだお話してなかったんですね」と言った。

　何の話をされているのかさっぱり分からない私に藤さん話題を変えるように両手をぱんっと叩く。

「奥様はどんなお食事がお好きですか？　遠慮せずおっしゃってください。旦那様がいらっしゃらない間は勿論、ご要望があれば別メニューでお作りしますので」

「あ、そのことなんですけど、お料理、私にも作らせてもらえませんか？　たいしたものは作れないので藤さんにお勉強させてもらいたいなって」

　いくつかの疑問が重なってもやもやする。もやもやの一つだったこの家での家事をしたいとお願いすることにした。

　藤さんは「奥様が普段のお料理を？」と驚いている。誠さん達が住む世界では、趣味以外のお料理をすることは珍しいらしい。

（あっ、もしかして私藤さんのお仕事を奪おうとしてる？）

　そんなつもりじゃなかった。謝ろうとしたそのとき、藤さんは「奥様がお料理を作られたら、旦那様にそれ以上のご馳走はございませんよ」と嬉しそうに承諾してくれた。

　藤さんがいうようなご馳走なんて作れないけれど、せめて食べてもらえる程度になるよう練習しなければ。