【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 3箱のうち2箱は服や下着類だから一人の時にやるからとそのままだし、実質1箱だけしかなかった。
「これなら2人に来てもらうの申し訳なかったな……」

 唯一開封された1箱に入っていたのは、本だ。とはいっても流行の漫画や雑誌ではなく、母……亡くなったお母さんから譲り受けた小説が中心だ。
 ロマンチックな内容が多くて、私の知らないお母さんの顔を想像するのが好きだった。
 もし、好きな人ができたらお母さんにも相談したのかな、とか。
 ……もし、政略結婚以外で誠さんと出会っていたら、お母さんならなんて言うだろう、とか。そんな妄想。

 とはいえ、本棚がどこにあるかも分からず、ついその場に座り込んで本を捲ってしまう。

「おっ、それ持ってきたんだ」

 それ、と健二くんの視線が向けられたのは持っている本の中で1番のお気に入り――

『アラジンと魔法のランプ』だ。幼い頃、母に何度も読んで欲しいとせがんだのを覚えている。

「うん。この本大好きなんだ。他のシリーズも昔母に読んでもらったの」

 この話には魔法のランプと魔神が登場する。他のシリーズには魔法の絨毯も。
 どれもファンタジックで、エキゾチック。そして自由で情熱的。今でも大好きな話だ。

「そうだったな……お前にしては乙女チックな趣味だよな」

「一言多いね、健二くん」

 実家の私の部屋に遊びに来ていた健二くんには何度かこの話をしたことがあった。
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