【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 思い返す度にキラキラした気持ちになる。

 ――キラキラ。この絵本の他にも持っていた気がする。どんなに寂しいときも、それがあれば世界が輝いて見えたもの。あれは……どこにやったんだっけ。

 なにを思い出せないのかも分からないのに、なぜか少年の姿が浮かんだ。
 魔法の絨毯に何度も一緒に乗って飛び回った、夢の中の彼。
 色んなことにもやもやしているせいだろうか。もう何年も思い出せない彼の名前が気になって仕方がない。

「まあ、そういうところもアイツなら好きだって言うんだろうな」

 両手を頭の後ろに組んだ健二くんがいう。
 以前誠さんが健二くんのことを話していた姿と重なって私は思わずくすっと笑ってしまった。

「誠さんと健二くん、仲が良いんだね。お互いのこと凄く分かってそう」

「まー、腐れ縁だしな。といっても今やアイツが雇い主だけど」

 まんざらでもない健二くんに私はなんとなく聞いてみる。

「誠さんって中学生の時どんな感じだったの?」

 私は今と変わらないクールさで、あのルックスだから女の子にもモテただろうなあなんて暢気な想像をする。

「そーだな……アイツは今よりずっと笑わなかったよ。ガキっぽくなくて、全部諦めて俯瞰してる感じだった。そのせいで怖がられてて俺以外話しかけてるヤツいなかったな」
< 77 / 145 >

この作品をシェア

pagetop