【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 遠くをみて思い返すような健二くんの目が、私の想像したクールとは別物だったのだと悟らせる。健二くんは私と目が合うと少し目を伏せた。

「でも、あるときから急に変わってさ。生きる目的ができたみたいな。それを手に入れるためならなんでもやるって感じで……どうせアイツから聞いてないんだろ?」

 健二くんの見透かすような目にどきりとして、反射的に目を逸らしてしまう。
 私の知らない、聞いたこともない誠さんの学生時代。誠さんを変えたなにか。なにをしてでも手に入れたかったものがあったこと。

「えー、なにそれ。それを手に入れるためならってお金? 権力? 女?」

 なにも言えない私に代わって、きららが私の絵本を捲りながら片手間で聞く。健二くんは身も蓋もねえと笑いながらちょっと意地悪そうに答えた。

「どれも正解。まあ、答え合わせは本人としろよ」

 本人に聞けないことをここで又聞きしようとした私の甘えに釘を刺された気がした。

「……うん。そうするね。二人とも、そろそろ休憩にしようか」

 私は立ち上がって、二人をリビングへと案内した。

「お姉ちゃんさっきからどうしたの?」

 リビングのソファーに座ってお茶を飲んでいると、きららが心配そうに顔を覗き込んできた。先程からこの辺の流行のカフェについて話してくれているきららを余所に上の空だった私は口ごもってしまう。
「あ……、ごめんね。その……」
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