【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 私の頭の中は今朝出張に行ってしまった誠さんのことでいっぱいだった。
 そして私の知らない誠さんの過去のこと。誠さんが何に変えても手に入れようとしているものを健二くんは「お金と権力と女」そのどれもが正解だといっていた。

 もし、最後のが「彼女」だとしたら――……?

 項の辺りから血の気が引く感覚がして、私は無意識に口に出していた。

「誠さんがどうしても手に入れたかった女性……私、見ちゃったかもしれない」

「は!?」

 食い気味で反応したのは健二くんだった。あり得ない、そんな表情。

「なにそれどういうこと!? 詳しく話してお姉ちゃん!」

 私の肩を掴んで揺さぶるようにしたきららに、私は戸惑いながら昨日、ホテルの駐車場で見かけた「彼女」のことを話した。


「……まあ、最初から私はお父さんから命の恩人の誠さんへのお礼の品みたいなものだし、あんな素敵な人が私を……なんて夢をみれただけでも幸福というか……」

 昨日見た光景を思い返しただけで視界が滲む。昨日のことなのにとても昔のことにさえ感じていて、記憶の中の「彼女」は遠目にも私に勝ち目なんてこれっぽっちもないほど綺麗な人で。
 二人の前で泣くわけにはいなかいから必要以上にへらへらして、終始自虐的になってしまう。

「あり得ねえよ。アイツに限って……なんかの勘違いだろっ」

 すぐ否定した健二くんがどこかバツが悪そうに頭を掻く。
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