【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 無理もない。私自身、自分がこんなに行動的だったなんてと驚いている。
 さて……旅行資金は会社員時代に貯めていた万が一用のお金があるし、パスポートは新婚旅行が海外だったときのためにと更新してある。ここまでは問題ない。
 とはいえ、勢いで言ってみたものの、当日に航空券なんて取れるのだろうか? 海外旅行なんて、亡くなった母と一度行ったきりだ。

 今は10月。アブダビの今の気温は? 必要最低限持っていかなければならないものは?
 矢継ぎ早に脳内を埋め尽くす疑問に焦りそうになりながら、スマホでフライト時間を調べる。
 成田空港から便がでてるのね。あとはホテルも探さないと……。

「お姉ちゃん海外なんて行ったことないでしょ!? 一人じゃ危ないし私も行く! ほら、私パスポート持ってきてるし! それにほら、私もう夏休みだし!」

 きららは写真付きの身分証を求められたときのために普段から持ち歩いているらしいパスポートを取り出して懇願する。私はそんなきららに首を横に振った。

「大丈夫だよ。心配しないで。向こうに行ったら誠さんもいるし」

 と、いったものの、誠さんがどのホテルに泊まっているのかなんて知らない。
 今から電話して本人に聞いてみようか……ううん、絶対に来るなって言われるに決まっている。仮にも仕事で行っているのだから当然だ。
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