【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 それでも、私は行きたい。このまま大人しく誠さんが帰ってくるのを待っているなんてまっぴらだ。たとえ迷惑だったとしても、向こうの空港についてから連絡してみよう。

「奥様、きらら様」

 ぬっと、私ときららの間に藤さんが顔をだす。

「きゃあっ! ご、ごめんなさい藤さん、びっくりしちゃって……」

 部屋をでていった藤さんが突然顔をだしたものだから、きららも私も短い悲鳴をあげてしまった。藤さんはいえいえ、と首を振って、ドンッと私の前にキャリーバッグを置いた。
「奥様、フライトは今夜10時半でございます。最低限の荷物と、航空券です。ホテルは旦那様と同じホテルを手配しました」

 私の外出の用意をしてほしい、の一言でここまで用意してくれたの!?
 藤さんは私に電子チケットを印刷したものと握らせる。この短時間で航空券とホテルの手配をどうやって……!?

 驚きから頭がまわらなくなりつつ、深く息を吸ってから、藤さんに答えた。

「藤さん、お気持ちはすごく嬉しいんですけれどこれは受け取れません。私の我が儘ですし、私自身でなんとかしたいんです」

 藤さんは相変わらずにこりと微笑み、淡々とした口調で話す。

「いいえ。受け取っていただかなければ困ります。誠お坊ちゃん……いえ、旦那様に奥様が会いに行かれるのですから。それにこれは私個人の資金ではありません。九条家、から出資されております」
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