【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 心配そうに私を見つめる伯母に、精一杯微笑む。この人にこれ以上心配をかけちゃだめと思った。

 政略的な結婚、そう言われたけれどその真意は一切わからない。
 彼と宇野堂にいったいどんな繋がりが?
 彼のような人がなんのために私と結婚するのだろう。今のところ彼にメリットがあるとは思えない。
 あまりに情報が少なすぎる。私の中で彼は綺麗な顔をした不審者で、今日から私の婚約者らしい人だ。

 その夜、私は引き出しにしまっていた父のエンディングノートを開いた。
 普通のキャンパスノートに殴り書きされたそれは、葬儀のことなどそれらしいものから電話のメモに使ったと思われるもの、謎のキャラクターの落書きなんかが書いてある。
 懐かしくなりながらページを捲っていくと『ゆきのの婚約者について』の題名がついた項目みつけた。

『長女、宇野ゆきのは、命の恩人である九条誠と結婚する。また、宇野堂の一切を一任する。詳しいことは2人でじっくりと話し合うように。』

 そうはっきりと書かれている。
 端的すぎる。意味が分からない。まるでお礼の品の感覚で私との結婚を差し出しているようにも取れる。
 そのほかは妹のきららの面倒もみるように、とも追記されていて、九条さんと思われるサインまで入っている。まるで契約書だ。
 だいたい、彼が父の命の恩人だったなんて、今初めて知った。一体いつ出会っていたんだろう。
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