【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 時刻はまだ7時前。しかも出張中だ。優さんの登場に目を輝かせて手を振り返していたきららも、私につられて頭を下げる。

「やだなあ。頭をあげてください。僕が好きで来たんですから……おおまかな事情はきららさんから伺っていますし」

 優さんの苦笑する声が落ちてきて、はっと顔をあげる。

「こういうときは謝るんじゃなくて、お礼を言ってくれると嬉しいです。あっ、有り難く思え!っていってるんじゃないですよ?」

 優さんは一瞬、ぷんっと怒った顔をしたかと思えば、ぱっと目を細めて大きく笑う。
 優さんの言葉に、私の横で戸惑っていたきららの表情も明るくなる。

「そーだよ! 因みに、優さんはアタシを迎えに来てくれたんだからね! お姉ちゃんはあくまでもついでだから!」

 私が開口一番で謝罪してしまったせいで暗くなってしまった雰囲気を、優さんときららが明るくしてくれた。
 そっか。こういうときは謝罪じゃなくて、感謝するべきなんだ。
 私が謝罪する度、機械的な笑みを浮かべていた誠さん……きっと、そのときも感謝を伝えればよかったんだ。

「うん。優さん、迎えにきてくださってありがとうございます」

 今度は頭を下げてではなく、優さんの目をみて伝えた。
 優さんは、微笑む、というよりははにかんでくれる。

「どういたしまして。では、タクシーを待たせてあるので行きましょう」

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