【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 優さんはそうですか……と少し考えるような顔をして、なにか思いついたように、あっ、といった。

「お義姉さん」

「はい」

「お義姉さんに敬語使われるのなんだか違和感があるので……優、でいいです。兄さんもきっともっとフランクに話してほしいと思いますよ」

 突然、改めて呼ばれて、なにを言われるのかと思えば、可愛い提案で思わず笑ってしまった。けれど、優さんにタメ口なんて。それに今さりげなく誠さんにもそうしたらいいと提案された気がする。
 たしかに、もう身内なわけだし……きららも優さんには親しげに話しているし……。
 大体、唯一、誠さん以外で身近な男性である健二くんでさえ呼び捨てにしたことがない。
 つい、それに政略結婚なのに……と過ってしまい、いやいや!と頭を振る。

「えっと、じゃあ、優くん……でどうでしょ……かな?」

 私の精一杯に、前の席の二人が吹き出した。きららなんて、肩を振るわせている。
 そんなに笑わなくても。

「わかりました。それでいきましょう。ホテルまでまだ時間があるので、少しゆっくりされててください」

「私にタメ口でって言う割には優くんは敬語なん……だね?」

 つい、敬語になってしまいそうになるのを途中で言い換える。馴れない。

 優くんときららはまだ笑っている。
「一応お義姉さんのほうが年上ですからね。年長者を敬っているんです……よかったらどうぞ」

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