【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 くっ、となにも言えなくなって、差し出されたものを受けとってしまう。
 確かに私の方が年上だけど……。
 優くんがくれたのは、透明のビニールに包まれたピンク色のキャンディみたいだ。ありがとう、とお礼を言って、口に放り込む。氷砂糖みたいに甘い。それに少しスパイシーな香りがする……ドバイのお菓子なのかな? どこかで食べたことある味がする……思い出せないけど。なんだか思い出せないことばかりだなあ。
 私がコロコロと口の中でキャンディを転がしていると優くんが続けた。

「……それに、先にお義姉さんと仲良くなったなんてことになったら、あの人になにされるか分からないからなあ……リスクは極力避けたい派なんです」

 飛行機の中で殆ど眠れなかったからか、甘い物を食べて気が抜けたからか、急に眠たくなってきた。ほろよい状態みたいに、頭がふわふわする。
 きららも同じなのか、優くんの肩に寄りかかって眠っているのが霞んできた視界にうつった。

「おやすみなさい。お義姉さん」

 優くんの声を聞きながら、私は重い瞼を閉じた。


 ふわふわ、気持ちいい。体が軽くて、どこまでも飛んでいけそう。
 足下には魔法の絨毯。もうこの時点で夢だと分かっていても、この高揚感は変わらない。
 万華鏡ように、キラキラした夜空を飛び回る。隣にいるのは、いつもの彼。
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