【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ
 表情が見えない――……。横を向くと、そこにいたのは少年ではなく、今一番会いたい人。
 誠さんだった。それも、機械的な笑みではなく、子供みたいに笑っている。
 ああ、私の妄想だって分かってても……誠さんがこんな風に笑ってくれていたら嬉しいなあ。
 あのときの少年も、誠さんも――……。


「お姉ちゃん! 起きて! ホテルついたよ!」

 きららに肩を揺すられて、はっと目を覚ます。夢をみるほど、熟睡していた。
 暢気だなあ~ときららに言われて、返す言葉もなくタクシーを降りる。

「ここがお二人が過ごすホテルです。僕も兄も別室に宿泊しています」

 優くんが手で指した先にあった光景に、私ときららは、ぽかんと口をあけてしまった。自分たちの過ごすホテルだと紹介されたのは、アラビア湾岸をバックに佇む、黄金の宮殿。
 以前、お母さんとアブダビツアーに来たときは、もちろんこんなホテルには泊まっていない。一目で見て分かる絢爛豪華さだ。誠さんの泊まっているホテルだと、藤さんに教えて貰ったホテル名が、そこに書いてあった。誠さんも、ここにいるんだ。

 気後れしながらも、私ときららは優くんの後に続いてホテルのなかに入る。
 ……予想はしていたけれど、なかも豪華。ゴールドを基調とした館内と、歩かなくても分かるほどの広さは本当にお城に招待されたかのような気分になる。
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