【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は１５年越しの愛を注ぐ

　メッセージは誠さんではなく、きららからだった。私は内心肩を落としつつ、いってらっしゃい、と返信する。また画面を裏返して置くと、今度は着信が鳴った。
　きららがスパの良さを実況してくれるんだろうかと、電話に出る。

「もー、そんなに素敵なスパ……」

「ゆきの！　すまない、着信もメッセージも今気がついたんだ」

　聞こえてきたのは、きららの声じゃない。私は思わず固まってしまって、すぐに返事をすることができなかった。頭いっぱいに考えていた、誠さんの声。
　返事がないことに不安げな誠さんが、私の名を呼ぶ。

「誠さん、今どこにいらっしゃいますか？」

　焦りがそのまま声に出て、思わず震えてしまう。

「仕事が一区切りついたから、今はホテルの自分の部屋にいるよ。部屋番号を教えて。あとで迎えに行くから」

「誠さんの部屋番号、優くんに教えて貰ったんです。1721号室ですよね？　私から伺ってもいいですか？」

　いいですかと疑問形ではあるものの、これはお願いだ。
　誠さんの返事を聞く前に続ける。

「行きたい、です……私から誠さんのところに行きたいんです」

　誠さんが微かに息を飲んだ音が響く。迷惑だと、思われているだろうな。