騎士をやめて花嫁修業しろと言われた私は、公爵家お嬢さま御付きの騎士メイドとなりました!

第15話「打てば響く3人」

ロゼール、ベアトリスと、ジスレーヌ、元騎士のシスター達護衛の下、
修道院長以下、シスター達は無事、本館正門前にへ到着した。

正門の向こう側には……
ロゼールと同じく、ジスレーヌの後輩である元騎士のシスターふたりが、
スキなく身構えていた。

そして帰還したロゼール達を、強張った表情で睥睨(へいげい)している。

ここはジスレーヌに、開門を指示して貰った方が良いだろう。
ロゼールは、

「ジスレーヌ姉、宜しく!」

と、口調へ力を込めて、伝えた。
宜しく! の一言で、意思が通じ合う。
騎士隊で、ツーと言えば、カーと言う間柄であった賜物である。

「分かったわ、ロゼ」

と、応えたジスレーヌは、後輩をびしっ!と見据え

「……私よ! 今、戻ったわ。軽傷者は居るけど、全員無事だから安心して!」

「はいっ! シスター、ジスレーヌ!」

「一旦警戒を解いて開門! 私達が敷地内へ入ったら、すぐ閉門して!」

「はっ!」

さすが長年騎士隊で戦った先輩後輩である。
これまた、打てば響けと言わんばかりに、短い最低限のやりとりで意思が通じ合った。

「がらがらがら」と正門が開けられた。

ここで、ベアトリス以下へ指示を出すのは、総指揮官ロゼールの役目である。

「さあ! 全員! 急いで中へ! 負傷者を(いた)わりつつ(すみ)やかに!」

そんなロゼールを、ベアトリスがフォロー。
こちらも、阿吽(あうん)の呼吸、タイミングが完全に一致している。

「さあ! 元気な人は負傷者に手を貸してあげて!」

「「「「「はいっ!」」」」」

という事で、全員が無事に敷地内へと入った。

瞬間!

即座に「がらがらがら」と正門が閉められた。

すかさずロゼールの指示が飛ぶ。
今度は修道院長へ、だ。

「修道院長様!」

「はい!」

「回復魔法で、負傷者の治療をお願い致します! 救援が来るまで、本館からは一歩も外へ出ないよう、シスター達へ厳命してください!」

「は、はいっ!」

「では、正門の守りを交代します。私が見張っています! ベアトリス様」

「おう!」

「ジスレーヌ姉!」

「はい!」

「シスター達と一緒に本館で休養を取ってください! 敵も討ち果たしたし、反撃はもうないでしょう。そして、この正門は頑丈です! 万が一反撃があっても、私ひとり、いやもうひとり居れば十分ですから!」

とロゼールが言えば、

「はいっ!」

と、すかさず手を挙げたのはベアトリスである。

「ベアトリス様」

「そのひとり、私が立候補! 反論無用!」

そして、ジスレーヌも。

「ふたりの教育係の私も立候補! 3人で正門を守り、救援を待ちましょう! 反論は無用ね」

「ええっと……」

少し戸惑うロゼールに対し、ベアトリスとジスレーヌは顔を見合わせ、にっこりと笑ったのである。 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

騎士隊OGのシスター達に先導され、修道院長とシスター達は本館へ引き上げて行った。

残ったのは、ロゼール、ベアトリス、ジスレーヌである。

改めて、正門の外を見たが敵の気配はない。

ここで初めて、ロゼールが安堵の息を吐く。

「倒したオークどもが不死者(アンデッド)化する恐れはありますが、救援隊が来るまでくらいなら、ただの死骸になっているでしょう」

捕捉しよう。
この世界では、魔物の死骸を放置すると、不死者(アンデッド)化すると言われている。
不死者(アンデッド)……とは文字通り死んでいない、死にきっていない。
かつて生命体であったものが、すでに生命が失われているにもかかわらず活動する、超自然的な存在である。
亡霊、ゾンビ、吸血鬼等が含まれるが、ここでロゼールが言っているのは、
イメージとして、倒したオークの死骸がゾンビになる事だ。

しかし、ベアトリスは不敵に笑う。

「オークゾンビ? 結構じゃない、地獄へ送り返してやるわ! この3人ならば簡単に出来るでしょ?」

すると、ジスレーヌもにっこり。
彼女もベアトリスの戦いぶりを見たのは初めて。

並みの騎士を遥かに超えたベアトリスの強さに感嘆。
「噂通り」と納得していたのである。

「うふふ、そうですね、ベアトリス様」

「うふふ、分かってるじゃない、シスター、ジスレーヌ。あ、そうだ!」

ベアトリスは、はたと手を叩く。

「警戒しながら、ただ救援を待つのも芸がないわ。ねえ、ロゼール」

アイコンタクトを送って来るベアトリス。

対して、ロゼールは大きく頷く。
不思議な事に、ベアトリスの考えている事がはっきりと分かるのだ。

「……成る程、確かにそうですね。修道院改革案の共有をジスレーヌ姉としておきましょう」

言葉が少なくとも完璧な意思疎通が出来て、ベアトリスも嬉しそうである。

「ピンポーン! と、いう事でシスター、ジスレーヌ、宜しくね!」

「了解です!」

と元気に答えるジスレーヌ。

3人は門外をしっかりと警戒しながら、修道院改革案を話し合い、共有した。
これで、騒動が収束したら、打てば響くように、
すぐ修道院長と改革案が話せるに違いない。

約1時間後……
騎士隊50名、王国軍100名の計150名が、救援部隊として、
ロゼール達3人の前に現れたのであった。
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