騎士をやめて花嫁修業しろと言われた私は、公爵家お嬢さま御付きの騎士メイドとなりました!
第28話「ロゼールの仕事」
ベアトリスから、本日の業務終了を言い渡され……
与えられた3間続きの部屋へ戻ると……
ロゼールは改めて各所を確認……否! 探索した。
自分のペースで、じっくりと見て回ったのだ。
先ほど、バジルがメイドたちへ命じ、運んだ荷物は用途別に各部屋へ運んであった。
従僕ではなく、同性のメイドが運んでくれたので、女子の思考、嗜好も踏まえて、
配置、収納してあったのも喜ばしい。
だが……ベアトリスの指示通り、くつろぐ、休むなど、とんでもなかった。
ロゼは、ベアトリスから試されているからだ。
常人なら常識外の指示だと絶句するに違いない。
ベアトリスの専属たるメイドの仕事を、研修もなしで、明日からばりばりこなさなくてはならないのだ。
それゆえ、与えられたドラーゼ家のメイド教育マニュアルとワーキングスケジュールを読み込み、学習し、習得する必要があった。
その前に……
と、ロゼールはクローゼットへ。
運ばれたメイド服は……数えると30着。
毎日取り換えても、1か月分であった。
左腕の袖に、小さくドラーゼ公爵家の紋章が刺繍されていた。
基本はエプロンドレスであるが、ロングドレスなど他の意匠もあった。
色も何種類もあり、デザインもそれぞれ異なっており、同じものはあまりない。
またホワイトブリムもたくさんあった。
こちらもエプロンドレス同じく、多種多様だ。
早速、数着を着用してみた。
寝室には、巨大な姿見があった。
姿見に映し、ロゼールはポーズをとってみた。
騎士隊時代は基本的に革鎧着用。
私服も貴族令嬢らしくなく、動きやすいブリオーを愛用していたロゼール。
当然、使用人が着るメイド服など未経験である。
しかし、結構……素敵!
と、喜ばしく感じてしまった。
サイズもぴったりであった。
ロゼールは一般の女子より、だいぶ大柄だ。
普段鍛えていたから、筋肉量も多い。
腕などムキムキである。
特注サイズだと思うけど……
なぜ、ぴったり?
不可解であったが、すぐにロゼールは気付いた。
ラパン修道院でロゼールが着用していた『修道服』を送り、そのサイズを基にして、メイド服を製作していたに違いないと。
で、あれば新品の革鎧も推して知るべし。
同じパターンで、ぴったりに作っているに違いない。
着るものは心配ない!
大きく頷いたロゼールはメイド服のまま、書斎へ。
バジルから渡された、ドラーゼ家のメイド教育マニュアルとワーキングスケジュールを机と同デザインの椅子に座り、じっくりと読み込み出したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
5W1Hを確認!に忠実なロゼール。
「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」
「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」を踏まえ、
ワーキングスケジュールから見て行く事に。
しかし……
「うわ! これ職種ごと? それぞれ、全然違う!」
と、驚いてしまった。
そう……
ロゼールが驚いた通り、メイドと一口に言っても、多様な職種があり、
それぞれに労働内容とスケジュールは全く違っていたのだ。
「う~ん。これは職種から確認して行った方がベストだ」
気持ちを取り直したロゼールは、ドラーゼ家のメイド教育マニュアルから目を通して行く。
ちなみに、実家のブランシュ男爵家でもメイドを何人か雇用していたが、
ひとりで何役も兼務しており、ドラーゼ公爵家ほど種類は多くない。
それにロゼールは騎士隊時代は宿舎暮らし。
自分の事は自分で行っていたので、
メイドの存在、仕事に認識、理解が及んではいないのだ。
「ええっと……うお! こんなにあるのか?」
ロゼールは驚き、じっくりとマニュアルを読んで行く。
〇ハウスキーパー
家政婦とも呼ばれ、女性使用人の中で最高位である。
小間使いと乳母を除く、全ての女性使用人の雇用と解雇、教育や監督を行う。
家計簿をつけ、メイドに、食事の支度、各所の整理整頓、清掃の指示をし、
高級布地や食器類の管理、魔導蒸留室の監督、生活必需品の購入をする。
また邸宅における女性主人の補佐や、
使用人部屋での食事の際に野菜などの取り分けも行う。
〇レディーズメイド
小間使いとも呼ばれ、女性使用人の中では、ハウスキーパーに次ぐ高い地位にある。
主な仕事は女性主人の身の回りの世話をする。
基本的には、主人が快適に過ごせるよう、気を遣い、話し相手になる。
また主人の衣類や装飾品、化粧品を管理する。
衣類を繕い直すことも仕事であり、
レディーズメイドには、裁縫の技術や薬品知識が必要である。
〇パーラーメイド
接客や給仕に重きを置いた職種である。
来客の対応や取次ぎ、または屋敷の案内、
主人への手紙の受け渡しをしたり、食事の際に準備や給仕を行う。
〇キッチンメイド
キッチンの雑用や簡単な調理を行う。
ここで、注釈が記載されている。
※現在ドラーゼ家では、ハウスキーパーを置かず、全てを家令バジルが取り仕切る。
「成る程……では、私の主はベアーテ様だが、実務はバジル殿……いや、様か。彼の指示に従うという事だ。まあメイド間に序列はあるだろうから、年下でも新参の私は、丁寧に対応し、したでに出るのが賢明だな」
大きく頷いたロゼール。
「私はハウスキーパー以外……レディーズメイド、パーラーメイド、キッチンメイドの仕事を担うという認識で問題ないだろう。料理人、家庭教師もオミットか? それとも、家庭教師はともかく、料理はやれとか? ううむ、ベアーテ様専属という事だが、臨機応変に、上手く立ち回れという事かなあ」
実務を考え、悩むロゼール。
マニュアルには、作業内容の詳細も記載されていた。
「まあ、言うは易く行うは難しだ。武技同様、経験を積み、熟練度を増すしかないな」
ここでハッとしたロゼール。
「武技といえば……ベアーテ様の訓練にも、私は付き従うという事だ。ラパン修道院なみに早起きという事かな」
再び頷いたロゼール。
早起きは騎士隊時代もお約束。
なので苦にはならない。
ロゼールは、改めてメイドのワーキングスケジュールを見た。
だが、やはり各職種によってバラバラである。
時間も作業内容も全く違うのだ。
次にロゼールは、主ベアトリスのスケジュール表を見る。
起床、朝の訓練と就寝の時間はほぼ決まっているが、それ以外、予定は未定だと聞いていた。
なので、あくまでも目安……である。
5:30AM――起床
6:00AM――朝の訓練《闘技場または室内訓練場》
8:00AM――朝食
9:00AM~11:30AM――各貴族家訪問《馬車》または習い事。
0:00PM――昼食《外出先で摂る事多し》
1:00PM~4:30PM――各貴族家訪問《馬車》または習い事。
6:00PM――夕食
7:00PM――音楽鑑賞、ダンス、読書、外国語研修等々。
10:30PM――就寝
「ううむ……結構、おおまかだ。早起きが嫌だとおっしゃっていた割には、普段も結構早起きでいらっしゃる。ベアーテ様のスケジュール管理も私の仕事か。まあ覚悟だけはしておこう。習い事も一緒に? まさかな……」
苦笑したロゼールは、
「使用人の朝礼が家令室で、午前7時にあるのか……どうするのかは、ベアーテ様に翌朝、確認しよう」
メイド関係の資料、スケジュール、そしてベアトリスにスケジュールを読み込み、
ロゼールはほぼ内容を暗記した。
気が付けば、既に午後11時を回っていた。
「呼び出しはない。では私も就寝しよう」
ロゼールは頷き、メイド服を脱ぐと、綺麗にたたみ、
ベッドへ潜り込んだのである。
与えられた3間続きの部屋へ戻ると……
ロゼールは改めて各所を確認……否! 探索した。
自分のペースで、じっくりと見て回ったのだ。
先ほど、バジルがメイドたちへ命じ、運んだ荷物は用途別に各部屋へ運んであった。
従僕ではなく、同性のメイドが運んでくれたので、女子の思考、嗜好も踏まえて、
配置、収納してあったのも喜ばしい。
だが……ベアトリスの指示通り、くつろぐ、休むなど、とんでもなかった。
ロゼは、ベアトリスから試されているからだ。
常人なら常識外の指示だと絶句するに違いない。
ベアトリスの専属たるメイドの仕事を、研修もなしで、明日からばりばりこなさなくてはならないのだ。
それゆえ、与えられたドラーゼ家のメイド教育マニュアルとワーキングスケジュールを読み込み、学習し、習得する必要があった。
その前に……
と、ロゼールはクローゼットへ。
運ばれたメイド服は……数えると30着。
毎日取り換えても、1か月分であった。
左腕の袖に、小さくドラーゼ公爵家の紋章が刺繍されていた。
基本はエプロンドレスであるが、ロングドレスなど他の意匠もあった。
色も何種類もあり、デザインもそれぞれ異なっており、同じものはあまりない。
またホワイトブリムもたくさんあった。
こちらもエプロンドレス同じく、多種多様だ。
早速、数着を着用してみた。
寝室には、巨大な姿見があった。
姿見に映し、ロゼールはポーズをとってみた。
騎士隊時代は基本的に革鎧着用。
私服も貴族令嬢らしくなく、動きやすいブリオーを愛用していたロゼール。
当然、使用人が着るメイド服など未経験である。
しかし、結構……素敵!
と、喜ばしく感じてしまった。
サイズもぴったりであった。
ロゼールは一般の女子より、だいぶ大柄だ。
普段鍛えていたから、筋肉量も多い。
腕などムキムキである。
特注サイズだと思うけど……
なぜ、ぴったり?
不可解であったが、すぐにロゼールは気付いた。
ラパン修道院でロゼールが着用していた『修道服』を送り、そのサイズを基にして、メイド服を製作していたに違いないと。
で、あれば新品の革鎧も推して知るべし。
同じパターンで、ぴったりに作っているに違いない。
着るものは心配ない!
大きく頷いたロゼールはメイド服のまま、書斎へ。
バジルから渡された、ドラーゼ家のメイド教育マニュアルとワーキングスケジュールを机と同デザインの椅子に座り、じっくりと読み込み出したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
5W1Hを確認!に忠実なロゼール。
「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」
「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」を踏まえ、
ワーキングスケジュールから見て行く事に。
しかし……
「うわ! これ職種ごと? それぞれ、全然違う!」
と、驚いてしまった。
そう……
ロゼールが驚いた通り、メイドと一口に言っても、多様な職種があり、
それぞれに労働内容とスケジュールは全く違っていたのだ。
「う~ん。これは職種から確認して行った方がベストだ」
気持ちを取り直したロゼールは、ドラーゼ家のメイド教育マニュアルから目を通して行く。
ちなみに、実家のブランシュ男爵家でもメイドを何人か雇用していたが、
ひとりで何役も兼務しており、ドラーゼ公爵家ほど種類は多くない。
それにロゼールは騎士隊時代は宿舎暮らし。
自分の事は自分で行っていたので、
メイドの存在、仕事に認識、理解が及んではいないのだ。
「ええっと……うお! こんなにあるのか?」
ロゼールは驚き、じっくりとマニュアルを読んで行く。
〇ハウスキーパー
家政婦とも呼ばれ、女性使用人の中で最高位である。
小間使いと乳母を除く、全ての女性使用人の雇用と解雇、教育や監督を行う。
家計簿をつけ、メイドに、食事の支度、各所の整理整頓、清掃の指示をし、
高級布地や食器類の管理、魔導蒸留室の監督、生活必需品の購入をする。
また邸宅における女性主人の補佐や、
使用人部屋での食事の際に野菜などの取り分けも行う。
〇レディーズメイド
小間使いとも呼ばれ、女性使用人の中では、ハウスキーパーに次ぐ高い地位にある。
主な仕事は女性主人の身の回りの世話をする。
基本的には、主人が快適に過ごせるよう、気を遣い、話し相手になる。
また主人の衣類や装飾品、化粧品を管理する。
衣類を繕い直すことも仕事であり、
レディーズメイドには、裁縫の技術や薬品知識が必要である。
〇パーラーメイド
接客や給仕に重きを置いた職種である。
来客の対応や取次ぎ、または屋敷の案内、
主人への手紙の受け渡しをしたり、食事の際に準備や給仕を行う。
〇キッチンメイド
キッチンの雑用や簡単な調理を行う。
ここで、注釈が記載されている。
※現在ドラーゼ家では、ハウスキーパーを置かず、全てを家令バジルが取り仕切る。
「成る程……では、私の主はベアーテ様だが、実務はバジル殿……いや、様か。彼の指示に従うという事だ。まあメイド間に序列はあるだろうから、年下でも新参の私は、丁寧に対応し、したでに出るのが賢明だな」
大きく頷いたロゼール。
「私はハウスキーパー以外……レディーズメイド、パーラーメイド、キッチンメイドの仕事を担うという認識で問題ないだろう。料理人、家庭教師もオミットか? それとも、家庭教師はともかく、料理はやれとか? ううむ、ベアーテ様専属という事だが、臨機応変に、上手く立ち回れという事かなあ」
実務を考え、悩むロゼール。
マニュアルには、作業内容の詳細も記載されていた。
「まあ、言うは易く行うは難しだ。武技同様、経験を積み、熟練度を増すしかないな」
ここでハッとしたロゼール。
「武技といえば……ベアーテ様の訓練にも、私は付き従うという事だ。ラパン修道院なみに早起きという事かな」
再び頷いたロゼール。
早起きは騎士隊時代もお約束。
なので苦にはならない。
ロゼールは、改めてメイドのワーキングスケジュールを見た。
だが、やはり各職種によってバラバラである。
時間も作業内容も全く違うのだ。
次にロゼールは、主ベアトリスのスケジュール表を見る。
起床、朝の訓練と就寝の時間はほぼ決まっているが、それ以外、予定は未定だと聞いていた。
なので、あくまでも目安……である。
5:30AM――起床
6:00AM――朝の訓練《闘技場または室内訓練場》
8:00AM――朝食
9:00AM~11:30AM――各貴族家訪問《馬車》または習い事。
0:00PM――昼食《外出先で摂る事多し》
1:00PM~4:30PM――各貴族家訪問《馬車》または習い事。
6:00PM――夕食
7:00PM――音楽鑑賞、ダンス、読書、外国語研修等々。
10:30PM――就寝
「ううむ……結構、おおまかだ。早起きが嫌だとおっしゃっていた割には、普段も結構早起きでいらっしゃる。ベアーテ様のスケジュール管理も私の仕事か。まあ覚悟だけはしておこう。習い事も一緒に? まさかな……」
苦笑したロゼールは、
「使用人の朝礼が家令室で、午前7時にあるのか……どうするのかは、ベアーテ様に翌朝、確認しよう」
メイド関係の資料、スケジュール、そしてベアトリスにスケジュールを読み込み、
ロゼールはほぼ内容を暗記した。
気が付けば、既に午後11時を回っていた。
「呼び出しはない。では私も就寝しよう」
ロゼールは頷き、メイド服を脱ぐと、綺麗にたたみ、
ベッドへ潜り込んだのである。