教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
再会の東京
「おはようございます、亜美さん!」
地下鉄の改札を出たところで、後ろから明るい声で呼びかけられた。
足を止めて振り返ると、職場の後輩の莉奈ちゃんが微笑んでいた。
ゆるめの巻き髪とパウダーブルーのジャケット――色白で、ふんわりした雰囲気の莉奈ちゃんは、朝のせわしさを感じさせず、私もつられて笑顔になる。
「おはよう、莉奈ちゃん。早いのね」
「亜美さんこそ」
「うん、なんか予約が立て込んじゃって。今朝は外商の矢野くんのお客様もいらっしゃるみたいだから、早めに行こうと思ったの」
「あ、矢野って私の同期です。けっこうできる子だから、いいお客様なのかも」
三つ後輩の莉奈ちゃんはメンズフロアのオーダーメイド部門で働いている。明るくて人懐こいので、ご年輩のお客様からもかわいがられているようだ。
「でも矢野が亜美さんにお願いした気持ち、よくわかります。お客様から大人気ですもの。亜美さんが復帰されてからフロアが活気づいたって、みんな言ってますよ」
「そんなことないよ」
「だって、あちらでもずいぶん引き止められたって聞きましたよ。出向の延長、考えなかったんですか?」
「えっ?」
瞬間、ローマの青い空と壮麗な景色が心の中に広がった。そこではにかむように微笑んでいた彼のことも。
――俺を待っていてくれるか?
忘れたいのに、いや、忘れなければならないのに、どうしても思い出してしまう大切な人。
地下鉄の改札を出たところで、後ろから明るい声で呼びかけられた。
足を止めて振り返ると、職場の後輩の莉奈ちゃんが微笑んでいた。
ゆるめの巻き髪とパウダーブルーのジャケット――色白で、ふんわりした雰囲気の莉奈ちゃんは、朝のせわしさを感じさせず、私もつられて笑顔になる。
「おはよう、莉奈ちゃん。早いのね」
「亜美さんこそ」
「うん、なんか予約が立て込んじゃって。今朝は外商の矢野くんのお客様もいらっしゃるみたいだから、早めに行こうと思ったの」
「あ、矢野って私の同期です。けっこうできる子だから、いいお客様なのかも」
三つ後輩の莉奈ちゃんはメンズフロアのオーダーメイド部門で働いている。明るくて人懐こいので、ご年輩のお客様からもかわいがられているようだ。
「でも矢野が亜美さんにお願いした気持ち、よくわかります。お客様から大人気ですもの。亜美さんが復帰されてからフロアが活気づいたって、みんな言ってますよ」
「そんなことないよ」
「だって、あちらでもずいぶん引き止められたって聞きましたよ。出向の延長、考えなかったんですか?」
「えっ?」
瞬間、ローマの青い空と壮麗な景色が心の中に広がった。そこではにかむように微笑んでいた彼のことも。
――俺を待っていてくれるか?
忘れたいのに、いや、忘れなければならないのに、どうしても思い出してしまう大切な人。