教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「……う、うん。まあね」

 私が言葉を濁したからか、莉奈ちゃんはさりげなく話題を変えてくれた。

「あ、そうだ。亜美さん、『カフェ・ロマン』のミスター・モンステラって知ってますか?」
「えっ、何それ?」

 ミスター・モンステラ――おかしなネーミングにふき出しそうになった。

「全然知らないけど、その人がどうかしたの?」

 莉奈ちゃんのおかげで、たそがれかけていた気持ちが一気に立ち直った。

 彼女が口にしたカフェは少し前に開店したばかりで、メンズフロアの奧にある。モンステラは観葉植物の名前だったと思うが、どういう関係があるのだろう?

「そっか。亜美さんとこからだと、あまり見えないかもしれませんね。それが最近、あそこのカフェにすごくすてきなお客様が通っていらして、いつもモンステラの大きな鉢のそばの席に座られるんですよ。だからミスター・モンステラ」
「へええ」
「毎日十一時から一時間くらいいらっしゃるそうです。私も何度か見かけましたけど、背が高くて、ごつめの黒縁眼鏡をかけて、ちょっと強面だけど、とんでもなく美形で――₋」

 楽しそうに説明していた莉奈ちゃんが、そこでふいに口をつぐんだ。

「……莉奈ちゃん?」
「ミスター……モンステラ?」
「えっ?」

 ふいに私たちの前に、長身の人影が立ちはだかった。
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